ドラマ『さまよう刃』考察|法か復讐か?私は石田ゆり子にイラつかせられる

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サスペンス

東野圭吾原作をWOWOWが全6話で映像化した連続ドラマW『さまよう刃』。被害者遺族の父を演じる竹野内豊の“怒り”を軸に、少年法・刑事司法・メディア報道という現実の難題をえぐり出す社会派サスペンスだ。

さて、本稿は娘、息子を持つ筆者(私)によるネタバレ徹底考察記事です。

基本情報

  • 作品名:連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」
  • 放送:WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド
  • 放送期間:2021年5月15日(土)〜6月19日(土) 毎週22:00(全6話)
  • 原作:東野圭吾『さまよう刃』
  • ジャンル:社会派サスペンス・犯罪ドラマ
  • 監督:片山慎三
  • 脚本:吉田紀子

主要キャスト(役名つき)

  • 竹野内豊:長峰重樹(被害者遺族の父・主人公)
  • 石田ゆり子:木島和佳子
  • 三浦貴大:織部孝史(刑事)
  • 古舘寛治:真野寛治(刑事)
  • 瀧内公美:小田切ゆかり(週刊誌記者)
  • 井上瑞稀(HiHi Jets):中井誠
  • 市川理矩:菅野快児
  • 河合優実:長峰絵摩
  • MEGUMI:菅野未知
  • 堀部圭亮:中井泰造
  • 霧島れいか:中井昌美
  • 本田博太郎:木島隆明
  • 國村隼:久塚耕三(捜査一課・指揮官)




あらすじ

平凡な父親の人生は、ある夜を境に崩壊する。愛娘が未成年の少年らにより辱められ、命を奪われたのだ。少年法の壁の前で「償い」は極端に軽く見える。警察手続きが進む一方で、父は次第に「法の裁き」と「自分の正義」のあいだで揺れ、やがて加害少年へと向き合う覚悟を固めていく。

コロナ禍の作品なんだ。みんなマスクしてるのがいま観ると凄い違和感。

「自分、密になるんで失礼します」というセリフもなんだか懐かしさすら感じる。




法か、復讐か——“二者択一”では終わらない

東野圭吾原作ですか。タイトルは非常に秀逸ですね。

娘を殺された父親は一体誰に刃を向ければいいのか?

本原作は2009年に寺尾聰主演で映画化されています。刑事の織部孝史役を竹野内豊が演じてますね。今回は娘を殺され復習を誓う父親役を演じてます。

本作の核心は、勧善懲悪を拒むところにあります。

これは娘を持つ父親としては本当に観てて不愉快になる作品でした。

いや、原作や作品自体は凄く良くできてますよ。問題は内容ですが。

自分ならどうするかな?誰しもが思うでしょう。

タクシー運転手の父親もそうですよ。自分の自殺した娘がレイプされた映像を警察署で観るシーンの辛さと言ったら…拷問でしょう。

なぜ被害者がさらに辛い思いをしないといけないのか

未成年の加害者は顔も名前も伏せられ、捕まっても数年で出てこれる。

実際に娘や息子を殺されたわけじゃないのでその親の気持ちは到底想像がつかない。

だって想像しただけで八つ裂きにして殺したくなるのが親の心情というものでしょ?

少年法は「更生の機会」を守る制度であり、匿名報道は「未来」を守る盾でもある。しかし、その盾が遺族の尊厳を二度三度と傷つける現実も、否応なく突きつけられる。

ここで重要なのは、法と復讐は対立項であると同時に、どちらも「不完全」だという認識だ。

法は時に遅く、量刑は軽い。復讐は即効性があるが、決して喪失を埋めない。どちらを選んでも、痛みは残るばかりだ。




石田ゆり子に腹が立つ

「自首はできないですか?いくら人を恨んでも悲しみは消えません。」

はぁ、そんなテンプレみたいな優等生のようなセリフ聞きたくない。

当然、殺人を止める役割が必要なのは理解できますが、本作はやたりと石田ゆり子にイライラさせられました。いや、役にですよ?

自分の誤診で無くした息子の件と娘をレイプされて殺された件を同じにしちゃいかんよ。

逆の立場ならそんな「自首しませんか?」なんて言葉は言えないと思う。

「生きてください。生きて忘れないでくださいエマさんを」。

裏を返せば「一生犯人を恨み続けて生きてください」ということです。あなたよくそんな無責任な言葉を吐けますね。

これ、直前で思いとどまるパターンかな?いやだな。観てる者はそう言う展開は望んでないでしょ?逐一石田ゆり子が長峰を止めようとするのも鬱陶しかった。

さらに彼女はペンションの人間にも関わらず、勝手に客の部屋に入り、パソコンまで開く始末。

最低ですよ。

なんだか石田ゆり子は観るたびに優等生みたいな役ばかりでげんなりしますね…




密告者のメッセージ

もう一つのミステリー要素として最後に伏線が回収されましたね。長峰に常に密告し続けていたのは國村隼演じる久塚。

彼も警察でありながら「少年法」に対して疑問に思っていた人間。彼は言う。

「警察が守るのは市民じゃない。法律だ。じゃその法律は絶対か?それも違う。法律は完璧じゃない。だから頻繁に改正される。」

つまり警察は常に改正される法に則って動くだけの組織にすぎないということ。

ここに「正しい」とは何か?という普遍のテーマを叩きつける。

つまり、それは長峰の復讐を肯定しているようにもとれる…

言葉には出さないけど、心の中じゃ…ねぇ?




少年法の改正

実は、本作品が書かれたあとの2021年当時から実務に効く大きな改正が入り、2022年4月1日から施行されています。

では何がどう変わった?

  • 18・19歳=「特定少年」の新設
    18・19歳で一定の重大事件は、家裁から検察へ原則逆送の対象が拡大。起訴後の刑事裁判では成人と同様の扱い(量刑判断など)になります。  
  • 実名・顔写真の公表が一部解禁
    18・19歳が起訴された場合に限り、氏名や写真を報じることが可能に(いわゆる推知報道の一部解除)。  
  • その他の技術的な見直し
    「虞犯」の扱いの再整理、原則逆送の拡充、保護処分・手続の特例など、18・19歳周りの条文が体系的に手直しされています。

2016年に選挙権が18歳へ引き下げされ、その後、民法の成年年齢が18歳に下がった(2022年)のに合わせ、少年法も18・19歳を「特定少年」として扱う枠組みに改められた——という流れです。

いや、18歳になったらもう成人と同じで良くないか?

悔しいことに本作の菅野たちは17歳なので対象外ではあるが…

子供がいない人といる人とでは若干の温度感が変わるであろう名作でした。

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