Netflixで配信されているスペイン発のドラマ——。『ビリオネアズ・シェルター(Billionaires’ Bunker)』。
最初はよくある“終末サバイバルもの”かと思いきや、1話観てその想像を裏切られた。
「お金があれば生き延びられる」なんて幻想は、ここでは通用しない。
愛、憎しみ、差別、そして人間の業。
それらすべてが爆発するこのドラマは、まるで『ペーパーハウス』と『スノーピアサー』を掛け合わせたようなスリラーだ。
本稿はネタバレ全開で感想を綴って参ります。
基本情報
原題:Billionaires’ Bunker(スペイン語タイトル:El refugio atómico)
配信:Netflix
ジャンル:スリラー / ドラマ / サバイバル
エピソード数:シーズン1で 8話
制作陣:アレックス・ピナ(Money Heist の制作者)ら
キャストの一部:ミレン・イバルグレン、ホアキン・フリエル、ナタリア・ヴェルベケ など
あらすじ

世界で核戦争や大規模な地球の危機が迫るなか、巨大な富を持つエリート層たちが豪華な地下シェルターへと逃れます。
そのシェルターの名は Kimera Underground Park。豪華で完璧な避難施設を謳うこの場所に、富裕層とその家族が暮らし始めます。しかし地下での生活には閉塞感や不信が渦巻き、家族同士、入居者同士の確執や過去の因縁が浮き彫りに。
やがて「この終末シナリオ自体が計画されたものではないか?」という疑念も芽生えていきます。
目まぐるしい展開にやめられない、止まらない
日本では全然話題になっていないのはなぜ?こんなに面白いのに!
スペイン発のNetflixオリジナルドラマで全8話で構成されている本作。ちょっと見始めたら止まらなくて結局1日で観てしまった。
第三次世界大戦が勃発し、スペインの富裕層たちは核戦争の差し迫った脅威に備えて地下のシェルターへ避難する話。
特別な地下シェルター「キメラ・アンダーグラウンドパーク」。シェルター内は巨大ホテルのようで数組の富裕層たちが居住することになる。
世界は核爆発で世界が終わってしまったようで、1話目は一癖二癖ありそうな2つの家族がメインで話進みます。
1話の導入は、まるで終末系サバイバルドラマ。
ところが、エピソードの最後でいきなり裏切りの一撃。
観た人は全員、「核戦争モノ」と思い込んだ瞬間に、それが計画されたフェイクだったと1話のラストであっさりと明かされる。
しかもその種明かしすら前菜に過ぎない。
本作の本質はサバイバルではない。
地下の閉ざされた世界なのに、展開が早くテンポが抜群。まるで『ペーパーハウス』の密室版。
もはや全く目が離せない展開の連続。なぜならこの1話の種明かしすらもけっこうどうでもよくなるくらいの愛憎劇が用意されてるからです。
濃すぎるキャラクターたち
そもそも主人公はドラッグやって飲酒運転した挙句に嫁を自動車事故で殺してしまい、3年で出所。
このシェルターには殺してしまった加害者家族と、娘を殺された被害者家族の2家族がいる。その二つの家族がテーブルを囲って食事する地獄のようなシーンにもゾクゾクさせられる。
でも「水に流しましょう」って加害者家族が言うもんだから「どんな神経しとんねん!」とツッコミをいれそうになるが、話が進むにつれて納得というか、あぁ、あのセリフ言い出す人たちだわと思わされることに。
話が展開するごとにどんどんキャラクターたちの本性が浮き彫りになっていく。
「あんたは本当に愛した人じゃなかった」とか
「不倫関係の方がうまくいってた。妻の座を狙いだしてから関係が変わってしまった」とか
極限状態のなかでそれぞれの家族内で色々と揉め出す始末。
挙句の果てに姉を殺された妹はずっと殺された彼を好きだったとか、
同性愛のおばあちゃんも「クリトリスは自然の贈り物、クリトリスは大量破壊兵器」とかいうパワーワードを残す始末。
もはやお前らが助かろうが死のうがどうでもよくなる。
密室劇なのに話の持っていき方が実に見事です。
核爆発を忘れさせるほどのキャラクターたちってすげぇなと思いました。
密室劇なのに息をのむテンポ感
舞台のほとんどは地下シェルターという閉ざされた空間。
それにも関わらず、話の展開は圧倒的にスピーディー。
「地下の狭い部屋で、これだけドラマを広げられるのか」と唸るほど脚本が巧妙。
次々に明かされる裏切り、過去の罪、そして人間の醜さ。
まさに核爆発より怖いのは人間を体現したドラマだ。
※親と一緒に観るのはおすすめしません。セリフのパンチが強すぎます。
金持ちも貧乏人も同じ地獄
本作が素晴らしいと思ったのが金持ちはしっかり嫌なやつに描かれてるんだけど、かと言ってこの詐欺グループもいいやつに描かれてないということ。
むしろ金持ちたちは結構本能に忠実な純粋な人たちなのではとすら思ってしまった。
金持ちは確かに傲慢で自己中心的。だが、彼らもまた生き残るために必死なだけ。
彼らを騙した詐欺グループも「富裕層なんてクソだ」と言いながら、自らも金と権力に取り憑かれていってる気がします。
つまり、このドラマに正義の側はいない。
金持ちも貧乏人も、同じ欲望に支配された被害者として描かれている。
アレックス・ピナらしい、階級風刺と人間の弱さの融合が見事だ。
良くない点
まず、Netflixお決まりの同性愛要素の挿入がやや強引。いらん。
「必ずドラマには同性愛を入れましょう」ってNetflixの規定があるのか?上層部は絶対に同性愛者だろ。
また、この詐欺グループはやたらと金持ちを嫌ってるんだけど、動機がちょっと甘いというか、「単に金持ちってだけの雑な理由」でターゲットにされている。
その割にこんな一大詐欺なのにターゲットたちのことについての情報が弱くて完全に計画に穴がある。
そしたらもっと念入りに何年も追ってましょうよ。
計画の途中で仲間割れし、殺し合いを始める展開も若干ご都合主義。
緻密な犯罪サスペンスというよりは、感情のぶつけ合い重視の人間劇として観た方が納得できる。
あれだけのシェルターを作れる財力があるなら、犯罪なんてせず普通にビジネスすればいいのに、とツッコミたくなる。
詰めが甘い部分で計画は揺らぎ始める。本末転倒です。ニュアンスとしては『地面師』。
最後は主に娘を殺された金持ちのオッサンが詐欺のターゲットにされてるんだけど、他の人たちにも狙われる理由があるはずなんだけどそこは描かれず。
ラストは主人公がシェルターを出ていくんだけど、なんかこれが既視感ある終わり方で残念。正直言うともうちょい先を見せてほしかった。
これはシーズン2あるのかな?
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