1969年のハリウッド。ネオンとカーステとAMラジオが支配する街に、落ち目のTV俳優と相棒スタントマンが生きていた——。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、映画そのものへのラブレターであり、同時に“史実の痛み”をフィクションの優しさで包み直す試みだ。
本稿はネタバレ全開で考察してまいります。
基本情報
原題/邦題:Once Upon a Time… in Hollywood/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
公開年:2019年(米:7月26日/日本:8月30日)
上映時間:161分(劇場版)
製作国:アメリカ
ジャンル:コメディ/ドラマ(オルタナティブ・ヒストリー)
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影:ロバート・リチャードソン
製作会社:コロンビア・ピクチャーズ/ヘイデイ・フィルムズ/ビジョナ・ロマンティカ ほか
配給:ソニー・ピクチャーズ(コロンビア)
主なキャスト:
- レオナルド・ディカプリオ(リック・ダルトン)
- ブラッド・ピット(クリフ・ブース)
- マーゴット・ロビー(シャロン・テート)
- アル・パチーノ、エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、ティモシー・オリファント、ダコタ・ファニング、ジュリア・バターズ、マイク・モー、ブルース・ダーン、カート・ラッセル、ルーク・ペリー ほか
レーティング:R(米)
製作費/興収(目安):約$90–96M/世界興収 約$370M超
受賞:第92回アカデミー賞 助演男優賞(ブラッド・ピット)・美術賞 受賞/作品賞・監督賞ほか計10部門ノミネート
概要(1行):1969年のハリウッド——落ち目のTV俳優と相棒スタントマンの友情を軸に、映画とテレビ、そして当時の実在事件を“もしも”で描くタランティーノ流ハリウッド絵巻。
あらすじ

リック・ダルトンはピークを過ぎたTV俳優。 スターへの道が拓けず焦る日々が続いていた。
そんな彼を支えるクリフ・ブースは彼に雇われた付き人でスタントマン、親友でもある。
エンタテインメント業界に精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。
そんなある日、リックの隣に時代の寵児監と女優シャロン・テート夫妻が越してくる。
自分たちとは対照的な二人の輝きに触れたリックは、俳優としての光明を求めイタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが—。
シャロン・テート殺人事件の予備知識は必須
2時間40分と長い映画だけど簡単に言えば、落ちぶれた俳優とそれを支えるスタントマンの友情物語を軸にシャロン・テート殺人事件のパロディが絡んでくるというもの。
最大のポイントは実際の事件のパロディではあるけれどタランティーノは事実とは異なるラストに作り変えていることだ。
はい、まずこのシャロン・テート殺人事件についての予備知識がないまま観るとマジでつまらない映画となる為、必ず映画を見る前に事件の概要は掴んでおくことを勧める。
簡単に説明しておくと1969年、妊娠8ヶ月目の女優シャロン・テートがチャールズ・マンソンによるカルト集団によってナイフで計16箇所を滅多刺しにされ殺されてしまった恐ろしい事件。
この映画ではディカプリオとブラッド・ピットによって襲ってきたマンソン一味を気持ちいいくらいにボコボコに返り討ちにしてシャロン・テートが救われたというストーリーへに作り変えている。
たまたまバンドのマリリン・マンソンが好きな私はチャールズ・マンソンの事を知ってたけど自分ら世代の人たちはまぁこの事件の事なんて知らないよね。生まれてもないし。
だからある程度予備知識がないと正直この映画、ちんぷんかんぷんだと思う。
いい意味でも悪い意味でもタランティーノ節
映画の尺は2時間40分もあって正直必要か?と思えるシーンもいくつか。
前半に至っては結構ダラダラっとしてて「何かあるのかな?」と思ったら結局何もないシーンが続いて正直観ていてストレス溜まった。
この何かあるよう何もないって結構タランティーノあるある。無駄な会話も多いんだけど、その無駄な会話がキャラクターを作っていく。傑作『パルプ・フィクション』もまさに無駄の連続だった。
暴力によるタランティーノ節が炸裂するのは本当に最後の最後。
落ちぶれた俳優とスタントマンの話だけでもなんとなく感動ストーリーにもできそうだけどタランティーノはそうはせずに淡々と描いている。
まぁあえてカラッとした二人の友情を描くのも味といえば味なのかもしれないが。
とは言え最後まで観れたのはディカプリオとプラピのおかげ。
特にマイペースなブラピのアクションはめちゃめちゃカッコよかったしディカプリオの炎射機のシーンなんて最高に笑ってしまった。
いや…
まぁ、実際に起きた事件なので笑いに変えるのは不謹慎なんだろうけどタランティーノはそのシーンをブラックユーモアたっぷりに描き、かなりスカッとするシーンにしてみせた。
まるで本当は殺されてしまったシャロン・テートの無念を晴らすかのように。
リアルタイムでこの事件のことを知ってる人が観るのとではまた印象違うんだろうな。
五分づつのショートムービー
映画としてどうなのかと言われると個人的には正直しんどかった。
五分づつのショートムービーを永遠と観せられてる感じ。
細かい小ネタもたくさんあるようだけど我々よりも上の年代の人が観てようやく気づくレベルなのでやっぱりかなり観る人を選ぶ映画なのは間違いない。
この映画を賞賛してる人と酷評してる人の差はそのあたりも関係するのかな。
にしてもシャロン・テート役のマーゴット・ロビー可愛いな…
「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」でも最高にセクシーだったけど。
彼女を観れただけでも十分価値のある映画と考えようか。
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