【ネタバレ考察】『ゲット・アウト(Get Out)』あらすじ・結末解説|薄気味悪い前半とB級化する後半の真相

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アメリカ映画

2017年に公開されたジョーダン・ピール長編デビュー作『ゲット・アウト』は、低予算ながら世界的大ヒットを記録し、アカデミー脚本賞まで射止めた社会派ホラー。怖さの正体は、幽霊でも化け物でもない。“感じのいい白人家庭”がまとった善意の仮面だ。

本稿は完全ネタバレ考察記事となります。

基本情報

公開年:2017年

製作国:アメリカ

上映時間:104分

ジャンル:社会派ホラー/サイコ・スリラー

監督・脚本:ジョーダン・ピール(長編監督デビュー作)

製作:ブラムハウス・プロダクションズ/QCエンタテインメント/モンキーポウ・プロダクションズ

音楽:マイケル・エイブルズ

撮影:トビー・オリバー

編集:グレゴリー・プロトキン

出演

  • ダニエル・カルーヤ(クリス)
  • アリソン・ウィリアムズ(ローズ)
  • ブラッドリー・ウィットフォード(ディーン)
  • キャスリン・キーナー(ミッシー)
  • カレブ・ランドリー・ジョーンズ(ジェレミー)
  • ベティ・ガブリエル(ジョージナ)
  • レイキース・スタンフィールド(ローガン/アンドレ)
  • リル・レル・ハウリー(ロッド)

受賞・評価:第90回アカデミー賞 脚本賞受賞(作品賞・監督賞・主演男優賞ノミネート)

興行成績:製作費約4〜5百万ドルに対し、世界興収2.5億ドル超のヒット




あらすじ

NYに暮らす黒人写真家クリスは、白人の恋人ローズの実家へ週末の挨拶に出向く。郊外の豪邸で両親の“過剰に好意的”な歓迎を受けるが、黒人の使用人たちの様子はどこか不自然。翌日のパーティには白人ばかりが集まり、奇妙な会話や挙動が重なる。やがて写真のフラッシュをきっかけに事件性が露わになり、クリスは“この家から出る”決断を迫られる——。




良いのは“違和感の積み上げ”まで

「どうせただのB級映画だろ」と思って何の予備知識もなくNetflixで鑑賞。

後で調べたら脚本賞受賞してたりとなかなか評価は高い様です。

結論から言うと低予算ながら前半はそこそこ楽しめました。むしろ結構好きな部類のホラーかも。

だけど後半の展開が、酷い…。

主人公は黒人の青年で白人の彼女の実家に挨拶がてら泊まりに行くんだけど、そこは人里離れた一軒家でいかにもホラー映画に出てくるテンプレ系な金持ちの家といった感じ。

使用人や管理人はなぜかみんな黒人。

そしてその家の家族と使用人たちの薄気味悪いこと。

特に黒人女性の使用人の笑いながら泣くアップ映像は最高に気持ち悪かった(めちゃ褒めてます)。

アメリカ映画にありがちな「直接的な恐怖」というよりかはジワジワっとくる不安を増やす前半は見事だ。

最近のハリウッドのホラーもマシになってきたけど幽霊やモンスターがバッと現れるよりもこうやって心理的にジワジワくる恐怖みたいな方がよっぽど怖い。

だけど管理人がダッシュで走ってくるシーンはかなりシュールで怖いというより笑ってしまったけど。

ホラーはお笑いと紙一重とは松本人志が言っていた言葉で場合によっちゃ怖いけど、場合によっちゃ笑えるシーンとなっています。

彼女の親父さんはやたらと愛想がいいし、母親も催眠術をかけるだのなんだかんだいって相当胡散臭い。弟はやたらと攻撃的だし親戚もなんとなく全体的に気持ち悪い。

我慢の限界がきてついに「帰るわ」って家を出ようとした瞬間、彼女を含む家族全員から拉致られることに(なんと彼女もグルでした)。

と、ここまではなかなかいいぞと思ったけどここからがかなりガッカリな展開に。




失速の理由

この家族、実は身体能力が高い黒人の身体に自分たち白人の脳を移植して永遠の命を得る手術を祖父の代から繰り返してきたのだ。

薄気味悪い女性使用人やダッシュしてきた管理人もみんな手術により白人の脳を植えられていた被害者だった。

あー…なんか一気に興醒め。

もはや漫画じゃん。意図は分かるが、SFホラーとしては昭和テイストの安手

緊張が“恐怖”ではなく“珍奇さ”にすり替わる。

特に彼女の親父がオペをするシーンのチープさとBGMのB級感といったら…

(「ムカデ人間」のオペシーンを思い出した)

結果から言ってその類稀なる身体能力で主人公は結構簡単に次々と家族をボコボコにしていく。

オペ室に運ぶのが弟一人だったりちょっとツメが甘いんだよ。

仮にも身体能力高いって思ってるなら2人がかりで来るべきでしょう。拉致・搬送・監視…要所要所で人数も警戒も甘い都合よく間抜けです。

そしてラストではなんだかんだであと一歩のところで彼女に拳銃で殺されそうになり、絶体絶命のピンチのピンチを迎えた瞬間、ずっとコンタクトを取ってた友人によって無事に救出されエンディングを迎える。

実はこのラスト、2パターン用意されていたようで直前で差し替えられたそうだ。

もう一つのエンディングは友人でなく警察の車がやってきて主人公が殺したと疑われて捕まってしまうというもの。

うーん、どっちが良かったんだろうね…

個人的にはホラーなんだから助からなくて良かったんだけど。




ホラーとして決定的な穴

唯一気になったのが助けに来た友人の存在だ。

ホラー映画のくせにちょっとコミカルな性格のせいでまるで緊張感が出ない。

完全に緊張感をブチ壊しにかかるキャラクターでホラー要素を台無しにしている。

さらにいうとこういう映画って外界との通信はシャットアウトすべきだと思う。

閉鎖的空間だからこその恐怖でそれをこんなコミカルなやつとコンタクトがとれる時点で緊張感は薄れてしまう。

「音楽やスポーツでも活躍してるのは黒人」「やっぱりセックスは凄いの?」とかいうセリフからもこの家族や親戚は黒人をやけに崇拝している。

崇拝と言ってもなんだか偏った崇拝である種、差別的でもある。

白人万歳、黒人は劣ってるみたいな従来からあるわかりやすい差別構造でないが「黒人はこうだ」と決めつけること自体やっぱり差別は差別なわけで人間の根底にある偏見を扱った一風変わったホラー映画でした。

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