『変態村』ホラー考察|日本・米製ホラーとここが違うヨーロッパ陰鬱演出を紐解く

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ホラー

ベルギー×フランス×ルクセンブルク合作ホラー映画『変態村』(原題:Calvaire)は、平凡な売れないシンガーのマーク(Laurent Lucas)が、ツアー中に乗っていたワゴン車の故障で真夜中の山道に放り出されるところから幕を開ける。助けを求めてたどり着いた小さな集落は、地図にさえ存在しない秘境。その村は、一歩足を踏み入れた瞬間から異質な空気をまとい、観客の鼓動を加速させる。

さて、そんな本作を完全ネタバレで考察していきます。

基本情報

作品名:変態村(原題:Calvaire/英題:The Ordeal)

監督:ファブリス・デュ・ヴェルツ(Fabrice Du Welz)

脚本:ファブリス・デュ・ヴェルツ、ロマン・プロタ

製作:マイケル・ジェンティル、エディ・ジェラドン=リュックス、ヴィンサン・タヴィエ

音楽:ヴァンサン・カヤ

撮影:ブノワ・デビー

編集:サビーヌ・ユボー

出演:

  • ローラン・ルカ(Marc Stevens 役)
  • ジャッキー・ベロワイエ(Mr. Bartel 役)
  • フィリップ・ナオン(Robert Orton 役)
  • ブリジット・ラヘイ(Mademoiselle Vicky 役)

製作国:ベルギー/フランス/ルクセンブルク

言語:フランス語

初上映:2004年5月18日(カンヌ国際映画祭)

劇場公開:2006年8月25日(アメリカ)

上映時間:94分

ジャンル:サイコロジカルホラー/スリラー

日本での劇場未公開(DVD・配信のみ)

あらすじ

売れないシンガーのマーク(Laurent Lucas)は、地方を巡る小規模ライブのツアー中、乗っていたワゴン車が故障し、夜の山道で立ち往生してしまう。途方に暮れた彼が助けを求めてたどり着いたのは、地図にも載らない小さな村。ペンションを営むバーテル氏は、マークを優しく迎え入れるが、やがて彼を「失踪した妻」と信じ込み、丸刈りにして服を奪い、監禁状態に。

村人たちは日常的には親切な顔を見せるものの、夜になるとピアノの不気味な旋律に誘われるように集団で狂気のダンスを踊り、森の奥では血まみれの儀式が執り行われる。脱出を図るマークだったが、村人の執拗な追跡と罠に翻弄され、精神と肉体を追い詰められていく。錯綜する親切と暴力の狭間で、彼は次第に自我の境界を見失い、「自分は一体誰なのか」というアイデンティティ・クライシスに陥っていく――。

怖いのではなく、キモイ。

ベルギー&フランス&ルクセンブルク合作のホラー映画です。

もうね、3回目の視聴です。

勘違いして欲しくないんだが私はこの映画が好きなわけではない。

ただただ後味悪いし気味悪いし、気持ちが悪い。

初見の感想は「生理的に無理」。

一体なんちゅうもん観せるんだよと憤ったものだ。

時が経ってこの映画を観たことを忘れててもう一回視聴してしまったのが2回目。

「あぁ、前にこれ観たよ。けどまた観るか。」って感じ。

その時も不快感MAXだった。

やっぱ観なきゃよかったと後悔。

で、さらに時が経ってどういう心境の変化か

「またあの不快感を味わいたいかも」などと思っての3回目の視聴。

やっぱ変態かな?

ちなみに邦題は叶井俊太郎が本編視聴後の印象、および舞台が地図にない村にちなんで命名したもので、原題の「Calvaire 」とは関連がなく、フランス語で「キリストの磔刑」「苦難、試練」といった意味合い。固有名詞の「le Calvaire」は、キリスト磔刑の地である「ゴルゴダの丘」。

ヨーロッパホラー特有の陰鬱美学

簡単に言うと、売れないシンガーが地図に載ってない村で散々な目に遭うってだけの映画です。

プロットはありきたりだしめちゃ王道で凄くわかりやすい。

でもこの映画には日本やアメリカにない独特な空気感があります。

「気持ち悪い」というか、生理的に嫌悪感を生み出します。

例えば冒頭のシーンで婆さんが主人公の手を取って自分の股間にもっていっていくシーンとか。なんか気持ち悪いと思ってしまった。

暗闇の森の中でひたすら犬を探す男だとか、村人がピアノに合わせて奇妙なダンスをするシーンとか。音色と踊りが生む不協和音は、「理性が集団によって破壊される瞬間」を象徴してます。

これらが続くので、とにかく居心地が悪くるなるシーンの連続。

日本のホラーともアメリカのホラーとも種類の違う独特な気持ち悪さがあります。

もっとも、アメリカ産ホラーはいきなりモンスターが襲ってくるとかばかりのエンタメナイズされたものばかりで全く怖いと感じたことがないけど。

気持ち悪いが決してつまらなくはない。

では気持ち悪いからつまらないか?と言われるとそれは決して違って、

僕はなんだかんだ気持ち悪くなりながらも最後まで観れたのでつまらなくはなかったのかも。3回も観てればそうか。

ペンションのバルテルは主人公マルクをいなくなった自分の妻グロリアだと思い込んで主人公を丸刈りにしてレイプする。なぜマルクを妻だと思ったのかその理由が描かれてません。そういう設定なのでだいぶ雑だなと思ったけど、さらに追い打ちをかけるように村人も当然マルクをグロリアだと思ってる。

そしてそんなマルクを奪い合おうとする村人。

そうか、もう理屈じゃないんだ。そういう村なんだ。

設定から疑い出すと世界に入れなくなるファンタジーと同じ類です。

そしてバルテル、どこかで観たことあるなと思ったら『カノン』のあのオッサンでした。どうりで虫唾が走るわけだ。

最初はいい人だけどなんだかちょっとづつ雰囲気がおかしいぞ?という切り替え具合が絶妙です。狂人やらせたら勝てないですね。

他にも村人の動物とのファックシーンなどイカレっぷりもなかなか。このシーンは真上からのアングルで逃げ場のない閉塞感で行われる残虐シーンを見事に表現しており、結構これが当時は画期的でした。

主人公がスカートを履きながら血だらけの丸刈りになって森を走るシーンとか。

気持ち悪いけどなかなか見ごたえがあり、何気に1シーン1シーンの印象が強め。

冒頭の老婆に関してもそうだけどなぜかみんなマルクに惹かれる登場人物たち。この辺の説明も皆無で全く理解できません。

そういう意味では、自分のなかで理解し難いものに出会う気持ち悪さに出会えます。

観始めると結局最後まで観てしまう。その力がある映画です。

いや、手放しで褒めたくはないですけどなんてったって私は3回も観てるくらいです。

見終わった後は二度と観るか!と思うけど数年後にまた観てもいいかなと思えるから不思議な作品。

個人的にラストのしりすぼみ感が気になります。もうちょっと絶望的に描いてもよかったのでは。

この映画がきっかけでヨーロッパのホラー映画ちょっとづつ漁ってます。

ずっと曇ってる様な陰鬱なあのヨーロッパのおどろおどろしい感じがクセになります。

あれ?自分も変態村の一員なんじゃないかって思えてきた。

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