『俺の家の話』ネタバレ考察感想|長瀬智也×クドカンがみせる家族×介護×能×プロレス、笑って泣いて胸に刺さる超傑作

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人間ドラマ

46歳の元プロレスラー・観山寿一(長瀬智也)が、認知症気味になった人間国宝の能楽師・観山寿三郎(西田敏行)の介護と家業(能楽の家元)の継承をめぐって実家に戻ることに。そこへ“謎の介護ヘルパー”志田さくら(戸田恵梨香)が関わり、相続・後妻疑惑・家族の確執・仕事の矜持が入り乱れる……という家族×介護×伝統芸能×プロレスをミックスしたホームドラマ。長瀬×クドカンならではの笑いと泣きの落差が魅力です。

本稿はネタバレ全開で感想を述べていきます。

基本情報

作品名:俺の家の話

放送局/枠:TBS系・金曜ドラマ(毎週金曜22:00)

放送期間:2021年1月22日〜3月26日

話数:全10話

脚本:宮藤官九郎

演出:金子文紀 ほか

主演:長瀬智也

主なキャスト

  • 長瀬智也(観山寿一)
  • 戸田恵梨香(志田さくら)
  • 西田敏行(観山寿三郎)
  • 永山絢斗(観山踊介)
  • 桐谷健太(観山寿限無)
  • 江口のりこ(長田舞)
  • 井之脇海(プリティ原)
  • 三宅弘城(堀コタツ)
  • 平岩紙(ユカ)
  • 道枝駿佑(長田大州)
  • 羽村仁成(観山秀生) ほか

あらすじ

元プロレスラーの42歳・観山寿一(長瀬智也)が、認知症ぎみの人間国宝の父・観山寿三郎(西田敏行)の介護と家元継承のため実家へ。そこへ現れた介護ヘルパー・志田さくら(戸田恵梨香)が「寿三郎の婚約者」を名乗り、相続と跡目で一家は騒然。自由人の弟・踊介(永山絢斗)、家を支えてきた異母弟・寿限無(桐谷健太)とぶつかり合いながら、寿一は能の稽古・介護・家族再生に奔走する——笑って泣けるホームドラマ。

あの名コンビが帰ってきた──長瀬智也×宮藤官九郎の到達点

クドカン脚本✖️長瀬智也主演作。「IWGP」「タイガー&ドラゴン」「うぬぼれ刑事」…日本の連ドラ史に刻まれた長瀬×クドカンのゴールデンコンビが帰ってきたと思ったら長瀬智也、この作品で実質引退。

だから凄い気合い入ってます、スタッフもキャストも。

と言うかなんだか作品から漲るパワーが尋常じゃない。

そういうのって観てると感じるんですよね。

まず感じるのは、“台詞の跳ね方”が段違いということ。言葉のキャッチボールが速いのに、ちゃんと情と理が両立している。寿一が見せる“豪快さと臆病さの同居”、これは長瀬智也にしか出せない音色。

さらに脇の布陣が強い。戸田恵梨香は得体の知れなさと温度を自在にコントロールし、西田敏行は存在感で画面を締める。桐谷健太の健気な等身大、永山絢斗の軽やかな距離感、江口のりこの生活温度。誰を切っても厚みのある人物像が立ち上がる。

「介護」というテーマ

本作が秀逸なのは、介護を笑いで薄めないことだ。ギャグや小ネタは多いのに、一線を越えない節度がある。

そもそも「介護」ってなかなか重いテーマなのに暗くて重い感じにさせないクドカンのバランス感覚が秀逸だ。

「明るくても暗くても介護は介護ですから」ってセリフがそれを物語っている。

しかしマスクが気になる。このドラマが放送されたのは2021年でちょうどコロナ禍真っ只中。だから今思うと必要以上にマスクしてるけどあんなにマスク越しに叫んだりしてたら意味ないわなぁ…笑

親を持つ誰しもが直面する介護問題。親父の寿三郎(西田敏行)を介護施設に預け、一人歩きながらその場を去る際に涙を流す寿一(長瀬智也)に思わずこちらももらい泣き。

施設に預ける事での「安心感」と親を見捨てた「後ろめたさ」が交差するこの感情。

自分の生活を守りながら、親を託す”という決断の重さを、説教ではなく身体の演技で見せ切る長瀬の強度に、思わずこちらも泣き。

能×プロレス──「型」と「受け」の共通項

クドカンはいつも“異種格闘技”の交差を物語に置く。今回は能とプロレス。

一見、真逆。だが見えてくるのは、型を守り、相手を生かす“受け”の美学だ。

  • :数百年継がれてきた型を体に入れる。呼吸、間、目線。主役を引き立てる地謡や囃子の“受け”。
  • プロレス:技を“受ける”ことで相手を立て、物語を紡ぐショービズ。
    寿一が父の面紐を結ぶ瞬間、かつてリングで培った“受け”が、家元の“受け”へとつながる。芸は人をつなぐという、クドカン印のまっすぐなメッセージが心地よい。

そして最終回──“父の言葉”を受け取って、寿一は去る

それでいて隠し子問題やら、息子の障害、親権争いなど次々とディープなテーマを容赦なく打っ込んでくるもんだから物語がどんどん厚みを増していく。

最後はどう考えても寿三郎がお亡くなりになり涙涙のシーンで終わるんだろう…

と思ってたらまさかの寿一が死ぬという誰しもが予想しなかった展開。こっちのパターンか!クドカン!

寿一は長いあいだ、父に褒められたことがない喪失を抱えていた。風呂で二人が肩を並べ、25年の溝を湯気でほどく。

最後には「お前は凄いよ。よくやったよ。」と言葉をもらう寿一はこれでこの世に未練を残すことなくあちらの世界へ。

長瀬智也さん、あなたへの言葉でもあるのかな。

あとは「IWGP」のBGMと「カラーギャング」のセリフなんかは流石に興奮したし、その他安定の阿部サダヲの抜群のキレ、塚本高史、ムロツヨシなどのゲストも物語を盛り上げる。

総じて誰が観ても刺さる内容で間違いなくクドカンと長瀬智也の代表作となった作品じゃないだろうか。最終回の余韻からまだ抜け出さないでいる自分でした。

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