2018年公開の映画『シンプル・フェイバー』は、一見おしゃれなママ友同士の交流から始まるサスペンス。
主演は『ピッチ・パーフェクト』でおなじみのアンナ・ケンドリックと、ファッションアイコンとしても知られるブレイク・ライヴリー。
華やかなファッションや軽妙な会話の裏で、次第に浮かび上がる“女の秘密”と“消えた友人の謎”。
ただのミステリーではなく、ブラックユーモアを効かせたスタイリッシュな作品として話題になりました。
本稿はネタバレ全開でラストと感想を綴って参ります。
基本情報
作品名:シンプル・フェイバー(原題:A Simple Favor)
公開:2018年(アメリカ/日本公開は2019年3月8日)
製作国:アメリカ
ジャンル:サスペンス/ミステリー/コメディ要素あり
上映時間:117分
監督:ポール・フェイグ(『ブライズメイズ』『ゴーストバスターズ』など)
原作:ダーシー・ベル小説『A Simple Favor』
脚本:ジェシカ・シャーザー
出演:
- アンナ・ケンドリック(ステファニー・スマザーズ)
- ブレイク・ライヴリー(エミリー・ネルソン)
- ヘンリー・ゴールディング(ショーン・タウンゼント)
- アンドリュー・ランドールズ、リンダ・カーデリーニ ほか
配給:ライオンズゲート(米)/KADOKAWA(日本)
あらすじ

ニューヨーク郊外で育児ブログを運営するシングルマザー、ステファニー(アンナ・ケンドリック)。明るく快活だが、どこか空気が読めない“頑張り屋キャラ”だ。
ある日、彼女は同じ学校に息子を通わせるエミリー(ブレイク・ライヴリー)と出会う。ファッション業界で働き、豪邸に住み、何もかもが完璧に見える女性。正反対の二人だったが、次第に親友のような関係になっていく。そんなある日、エミリーから「息子を迎えに行ってほしい」と頼まれる。だが彼女は迎えに現れず、そのまま行方不明に。夫ショーン(ヘンリー・ゴールディング)も所在を掴めず、警察が動き出すが、やがて湖からエミリーの遺体が発見される。
ところが、その「死体」は実は生き別れの双子。エミリーは自らの保険金目当てに“死んだことにした”のだった…。
親友の失踪と生還。疑惑と裏切り。そして最後にはステファニーの“育児ブログ(YouTube的配信)”を通じて真実が暴かれる。
「ゴーン・ガール」との比較
シンプルに言えばママ友の親友が姿を消してしまうミステリー映画。
旦那も妻がどこに行ったかのかまるで検討がつかないという状況。
いったい何故?どこに行った?
この映画を観た人の多くがまず思い出すのは、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』。夫婦間の秘密、女性の失踪、メディアを通じた操作…共通点は多い。
だが大きな違いはタッチの軽さ。
『ゴーン・ガール』は陰鬱で冷徹な心理サスペンスだったが、『シンプル・フェイバー』はブラックユーモアを交えテンポよく展開していく。シリアス一辺倒ではなく、ところどころクスッと笑える軽妙さがある。
その反面、「どんでん返しの衝撃度」という点では弱い。全体的にライトなタッチでテンポよく最後は畳み掛けるようにどんでん返しの連続。時間をかけずに矢継ぎ早に展開される為、最後は少々疲れるし展開が少し安っぽくなってしまっているのが残念だ。
“実は双子だった”“保険金詐欺だった”“ライブ配信で真実が暴かれる”という流れは、ミステリ好きには「既視感のあるプロット」に感じられる。
ファッションとスタイルで見せる映画
この映画の最大の魅力は、実はストーリーではなくスタイルだ。
特にブレイク・ライヴリー演じる失踪したエミリーのファッション。パンツスーツやシャープなドレス、日常では浮きまくるほどのモード感。
まるで「ファッション誌から飛び出してきたキャラクター」であり、それ自体が観客の目を引く。ちょっと漫画的でリアリティに欠けているけど。
一方、アンナ・ケンドリックのステファニーは、フリル付きのワンピースや明るいカラーを多用した服装。
二人が並ぶと、まるで「光と影」のようなコントラストが浮かび上がる。
この衣装デザインだけでも作品に華を添えていて、ストーリーの粗をある程度カバーしているのは間違いないとかないとか。
「かつてないストーリー展開」か?
消えた妻が湖で遺体として発見される。ところが実はその遺体は生き別れた双子であり自らの保険金目当てで自分を死んだ事にするっていうベタベタな展開。
予告や宣伝コピーでは「かつてないストーリー展開!」とうたわれたが、実際には王道ミステリの要素をなぞっただけに近い。
- 失踪 → 死体発見 → 実は生きていた
- 双子トリック
- 保険金詐欺
- ラストはネット配信で真実暴露
どれも既視感が強く、「驚愕」というより「やっぱりね」という感覚に落ち着いてしまう。
むしろテンポの速さと畳み掛けるような展開で「勢いで見せ切る」タイプの作品だと感じた。
主人公のブログ(YouTube的なもの)が解決の糸口になるんだろうなぁと予想したらまさにラストはライブ配信で決着。
「かつてないストーリー展開」ってことで売り出してるけど展開が早いだけで結構よくある単純な話です。
ツッコミどころと違和感
特に気になったのが実話を元にした映画じゃないのに最後の最後に登場人物達の後日談が説明文で流れるんだけどいるか?
そんなにキャラクターに思い入れがあるわけでもないし蛇足な気がする。
そもそもいくら親友でも友達の職場に無許可で勝手に入っていかないだろ。
っていう風にツッコミどころと粗を探しをすればキリがないんだけど、これはそういう映画じゃなくて
『シンプル・フェイバー』は、宣伝で期待したほど「衝撃的などんでん返し」がある映画ではない。
だが、軽妙なテンポ、ポップな演出、スタイリッシュな衣装で最後まで見せ切る力はある。
「ゴーン・ガールのライト版」と割り切れば、Netflixなどで気軽に観るには十分楽しめる。酒を片手に頭を空っぽにして眺めるのにちょうどいい作品だ。
とはいえ、「かつてない展開」を期待してしまうと肩透かし。むしろ本作はストーリーより雰囲気を楽しむ映画だと考えた方がいい。
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